(94-11-4)
title: 忘れられない国会論戦
author: 若宮 啓文
from: 中公新書 820 円
reviewer: 渡辺 治(watanabe@cs.titech.ac.jp)

国会での議員発言では,原則的に「朗読」が禁じられている. 日本の国会に,こんな規則があったなんて知っていましたか? はたして,今の国会議員の何人が,この規則を知っているだろ うか?そう思うくらい,国会での議論は無味乾燥した物のよう に思える.これは,討論することを避ける日本の体質なのだろ うか?いや,そうではない.日本の国会でも,重みのある論争 や,心に残る発言が,過去にはなされて来たのである.本書は, 戦後から最近に至るまで,国会で行なわれてきた演説や論戦の 中で,印象的なもの,大きな反響を巻き起こしたものについて 書いた本である.

著者の心に残る論戦を選び,その背景の解説を交えながら, 国会での質問・答弁を再現してみせてくれる.当時の背景が, 関係者の話や参考資料などを元に詳しく取材されている.その 解説に沿って,国会での論戦が,国会議事録や録音テープを元 に再現されている.その臨場感もあってか,下手な小説より, よほどおもしろい.

過去の論戦といっても,中曽根元首相vs.石橋元社会党書記 長の論戦などもあり,そう昔のことでもない.そう考えると, 今だって,優秀な国会議員は大勢いるのだから,聞きごたえの ある論戦が行なわれてもおかしくないはずだ.そう期待したい し,また,我々もそうした国会での議論を正当に評価していか なければならないのでは,と思った.(証人喚問をテレビ中継 する云々でもめるより,委員会での重要論戦をラジオ中継した り,そのダイジェスト版を解説つきで放映する努力をした方が, よっぽど日本の政治のためになると思うのだが,...)